オマル・ハイヤームと四行詩(ルバイヤート)を求めて

アリ・ダシュティ[著]、L. P. エルウェル─サットン[英訳]、大野純一[訳]

定価(本体2,200円+税)

ISBN978-4-434-19362-0 C0011
オマル・ハイヤームと四行詩(ルバイヤート)を求めて

中世ペルシャの稀有な数学者・天文学者・哲学者が
「四行詩」の形で自らに向かって発したつぶやき

それにはどんな思いが込められていたのか? 同国人であり、文人政治家である著者は、様々な資料にもとづいてハイヤームの実像に迫り、それを踏まえて彼の真作を厳選し、さらに随想の形で、深い敬愛の念を込めてハイヤームの思想を浮き彫りにしている。

ハイヤームと彼の四行詩に関する、
同国人による本格的研究

第1部 ハイヤームを求めて
◎詩人としてのハイヤーム◎同時代人の目に映じたハイヤーム◎けち、それとも常識?◎英雄、それとも受難者?◎ある王侯との論争◎彼自身の著作から見たハイヤーム◎ハイヤームとスーフィー教◎ハイヤームとイスマーイール派

第2部 四行詩を求めて
◎主要な四行詩◎生と死という軸◎ハイヤームの作風◎ハイヤームと彼の模倣者たち◎ハイヤームの飲酒詩◎西洋におけるハイヤーム観◎精選四行詩◎いくつかのハイヤーム似の四行詩

第3部 随想集
どこからわれわれは来て、どこへこれから行くのか?◎もしもその出来が悪かったら、それは〈彼〉以外の誰のせいだというのか?◎小さな羽虫──現われてはまた消えていく◎チューリップ、一度萎めば二度と開かない◎この息が自分が吸う最後のそれになるかどうかを


 すべての学識と研究も理性も袋小路へと行き着く。あらゆるものが不安や恐怖を抱かせる。
 が、一つだけ確かなことがある。それはわれわれがこの瞬間には生きていて、食べ、飲み、新鮮な空気を吸い、そして太陽の光で自分自身を暖めるということである。地上でのこれらの数少ない瞬間が、われわれが確信しうるすべてである。そしてここで、とうとう、ハイヤームの落ち着かない精神は安静を見出したように思われる。……
 今や彼は、くよくよと思い悩むことを放棄した賢人として……現われる。気難しい、むっつりした学者は消え失せ、かわりにわれわれのかき乱された神経をリュートの柔らかい調べで静めてくれる詩人が立っている。

世が明けた。起きなさい、愛しい女(ひと)よ。
ゆるりゆるりと静かに酒を注ぎ、リュートを弾いておくれ。
この世にまだいる者たちは長くは留まらず、
旅立った者たちは二度と戻ってはこないのだから。
……(第3部第5章より)


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