共時性の深層― ユング心理学が開く霊性への扉 ―』

老松克博[著]

定価(本体1,700円+税)

ISBN978-4-434-22916-9 C0011

共時性の深層― ユング心理学が開く霊性への扉 ―

「意味のある偶然の一致」として知られる
共時性の謎に迫る

ユング派分析家で、特に「アクティブ・イマジネーション」の研究で知られている著者は、個性化の鍵であり、超常現象の説明原理としても注目される共時性の謎に迫り、その本質が「今ここ」への集中にあることを突き止めた。

この貴重な遺産を継承し発展させることによって、人間の内的および外的な世界の根本的な仕組み、心や身体や物の間の隠されている関係性を見出していくよう努めること。それこそが、因果律の圧倒的優位によって目を曇らされている私たちにユングが与えた宿題なのだと思う。(本文より)

第四章から第八章にかけては、共時性の深層を探っていく。まず第四章においては、共時性と「今ここ」というあり方との強い結びつきを示す。「今ここ」というあり方を生きる一群の人たちがいて、そのような人たちには共時的現象が起きやすい。さらに、「今ここ」を賦活するセラピー技法もあって、やはり共時的現象とは縁が深い。ここでは、そのような事例をめぐって、共時性の本質の一端を論じることになる。

第五章では、「今ここ」というあり方の心理学的範型としてスサノヲ神話に注目し、その深層に分け入っていく。スサノヲはつねに「今ここ」を生きながら、共時性の原理に従って発作的に活動をはじめる。不意に起きる偶然の符合の背後には、この荒ぶる神の姿が見え隠れしている。くわえて、共時性が示す豊かな創造性も、やはりスサノヲの持つ特質の一つであることを指摘する。(「序文」より)

【本書の内容】

第一章 共時的現象と共時性

第二章 ユングの深層心理学

第三章 共時性とその周辺

第四章 「今ここ」にある永遠と無辺

第五章 共時性の元型的基盤

第六章 元型的モデルから臨床へ

第七章 運命との対峙

第八章 超常への窓

老松克博(おいまつ・かつひろ)
一九八四年、鳥取大学医学部卒業。一九九二〜九五年、チューリッヒ・ユング研究所留学。現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授。ユング派分析家。博士(医学)。
著書:『身体系個性化の深層心理学』(遠見書房)、『人格系と発達系』『スサノオ神話でよむ日本人』(講談社)、『ユング的悩み解消術』(平凡社)、『無意識と出会う』『成長する心』『元型的イメージとの対話』(トランスビュー)ほか。訳書:ユング『ヴィジョン・セミナー』『哲学の木』『クンダリニー・ヨーガの心理学』、アスパー『自己愛障害の臨床』(創元社)、ファース『絵が語る秘密』(日本評論社)ほか。

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