自己牢獄を超えて――仏教心理学入門』

キャロライン・ブレイジャー[著]/藤田一照[訳]

2,625円(税込)

ISBN4-434-08738-X C0011
自己牢獄を超えて――仏教心理学入門 デイビッド・ブレイジャー著『禅セラピー――仏教から心理療法への道』(大澤美枝子、木田満里代訳 コスモス・ライブラリー2004) 、『フィーリング・ブッダ――仏教への序章』(藤田一照訳 四季社2004)に続く、西洋心理学の伝統と仏教の伝統の統合をめざす現代的仏教心理学シリーズ第三弾。
著者のキャロライン・ブレイジャーは、1955年、英国生まれ。独自の仏教心理学に基づくセラピストやカウンセラー養成コースの中心的指導者として夫のデイビッド氏と共にセラピスト兼仏教修行者として活躍中。
「自己」は防衛のための「砦」に他ならない。それが「牢獄」となってわれわれの人生をさまざまに制限している。仏教の基本教義である五蘊や縁起を「自己=牢獄」の生成プロセスとして詳細にとらえなおし、そこから脱していかに世界や他者に向かって開かれた生き方へと転換していくかを示す。理論篇と実践篇からなる、待望の仏教心理学の体系的教科書。

東西を超えた智慧と実践へのインスピレーションに溢れた一冊
『仏教は東洋の偉大な「心の科学」である。あらゆる宗教の中で、仏教ほど精緻に心を分析しつくしたものはない。けれどもその本質はこれまで難解な宗教概念に覆われ、あたかも「分からない」「使えない」ことがむしろ深遠であるかのように扱われてきた。しかし西洋の心理学から仏教に光を当てた本書を読むとき、四聖諦、五薀といった、あの抹香臭い仏教語が、私たちの心を照らし、苦悩の原因を探り、具体的な行動へと導くための、明快な道しるべになっていることに驚かされるだろう。心理学を学ぶ人にとっては仏教という至高の智慧へのよき入門書だ。仏教者にとっては、現代の心の闇、世界の具体的問題へと仏教をひらく、「参加する仏教」への大きなきっかけとなるはずだ。そして一般人のあなたは、仏教と心理学を同時に学び、そして生きる力と指針を得るという、希有な体験を得ることだろう。東西を超えた智慧と実践へのインスピレーションに溢れた、現代を生きる一冊だ。』 

東京工業大学大学院 助教授  上田 紀行


《本書の内容》
第1部 理論とモデル
■苦しみに満ちた世界 ■嗜癖の心理学と出会い ■心のモデルと感覚器官 ■ルーパ:見ること と見ないこと ■スカンダス:回避のプロセス ■スカンダスを超えて ■蟻垤 ■自己を超えて
第2部 条件を作り出す
■接地 ■条件 ■霊感と変化 ■実験と出会い  ■他者への働きかけ:他者中心的アプローチ ■環境的要因に働きかける ■蛇をつかまえ、龍に乗る ■無常に直面する


●著者:キャロライン・ブレイジャー(Caroline Brazier)
1955年、英国北部のダーハムに生まれる。キール大学でカウンセリングの修士号取得。「関与する仏教」の教団である「阿弥陀宗(Amida-shu)」の僧侶(僧名は Prasada:プラサーダ;浄信の意)であり、心理療法の実践家でもある。夫のデイビッド・ブレイジャー(コスモス・ライブラリー刊『禅セラピー』の著者)とともに、現代における治療的関係という文脈で仏教心理学を活かす道を長年にわたって探求してきた。また、二人は英国において応用仏教心理学と心理療法の分野での訓練プログラムを指導し、ヨーロッパ、北アメリカにおいて定期的な活動をおこなっている。

●訳者:藤田一照(ふじた・いっしょう)
1954年、愛媛県生まれ。1982年、東京大学大学院教育学研究科教育心理学専攻博士過程中途退学。同年、曹洞宗紫竹林安泰寺入山。翌年得度。1987 年、米国マサチューセッツ州西部のヴァレ−禅堂住持として渡米。近隣の大学や瞑想センターでも禅の指導や講義をおこなう。2005年帰国。 論文に「アメリカ禅堂通信」、「ヴァレー禅堂雑想録」、「わたしの坐禅参究帖」(いずれも『大法輪』誌に連載)、共著に『新こころのシルクロード』(佐賀新聞刊)、訳書にティク・ナット・ハン『禅への鍵』(春秋社刊)、スティーブン・バチェラー『ダルマの実践』、デイビッド・ブレイジャー『フィーリング・ブッダ』(いずれも四季社刊)がある。
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